国営昭和記念公園
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国営昭和記念公園の生きもの情報 その1

特集#07座談会
「国営昭和記念公園の生きもの情報」
会場:昭和記念公園にて
日時:2007年3月15日(金曜日)
井上康平(㈱緑生研究所 代表取締役)
鈴木雅和(筑波大学芸術学系 教授)
椎名豊勝(国営昭和記念公園管理センター長)
大橋謙一(国営昭和記念公園事務所長)
飯塚良一(緑政計画研究所 代表取締役)

大橋謙一:国営昭和記念公園のテーマである「緑の回復と人間性の向上」を計画したのが昭和50年代の前半でした。明治、大正時代から続いていた大きな自然資源を立川基地として一度壊した。昭和40年代の高度経済成長期を背景に、自然を再生するために日本、東京の象徴的な公園整備を目指したのが始まりです。当時、単に緑を再生すればいいということではなく、表土保全に象徴されるような、本気でその基盤をつくっていこうという気持ちで公園整備をスタートしました。緑の回復については、本公園ではいろいろと先駆的な取り組みがなされてきました。当時係員として携わっていた私は、20年後の現在、ここまで緑の回復が実現されていることに、非常に感慨深いものを感じています。



■国営昭和記念公園の自然環境調査の蓄積と活用


井上康平:私はこれまで国営公園で数々の調査に関わり、「自然再生」という点において国営昭和記念公園はもっとも先駆的に、意欲的に取り組んでいるという印象を持っています。所長がおっしゃられていたように、その当時に関わっておられた方々の意識というものがかなり高かったということも理由にあるかとは思います。
国営公園ではさまざまな調査が行われていますが、自然地ではない都市域にある昭和記念公園において、自然環境の調査が最も良く行われているということは、それはそれとしてすごいことだと思います。特に5年に一度はエコアップ調査が実施されておりますし、「自然再生」につきましてもかなり先進的な事例を積み上げてきております。国営公園における自然再生という点では、国営昭和記念公園が一番進んでいるのではないかと思います。
最近では鈴木先生による「バイオアーカイブ※」という新しい方法で自然再生の姿を見ることができますし、これらの蓄積を今後はどのように活用していくかを考える時期にきているのではないかと思います。
※バイオアーカイブ:国営昭和記念公園の風景、植物、昆虫、野鳥等の生き物のデータベースを作成し、標本やGIS(地理情報システム)展示等により花みどり文化センターで公開している。

鈴木雅和:所長が昭和40年代の話をなされて思い出しだのですが、私が武蔵野の原風景として捉えているのは小学生のときに見たイメージで、近所にあった松林や麦畑で昆虫採集をして、それを夏休みの宿題で標本に作成しました。私は小学生以前から三鷹に住んでおり、特に立川にある高校に通学していたのが昭和40年あたりだったので、特別な思いがありました。あのように幼少時代に昆虫採集したような場所も少なくなってきている、現代の子供たちができなくなってきている。そういう意味においては、昭和記念公園の中でできたらなと思います。公園内では昆虫採集は禁止されているのですが、子ども時代の昆虫採集などの原点を生かすということにおいても、本来ならば園内で昆虫採集をさせてあげられればいいなと思っています。



■生き物情報の伝え方


椎名豊勝:公園を管理運営する側からは、公園整備で与えられた多様な資源が育ってきたという認識があります。そうした植物や動物などの生物資源と利用者とをいかに近づけるかがわれわれの使命だと感じております。
植物については、いろんな段階で近づけることができていると思っています。花の美しさを見ていただくだけでなく、種の保全・再生として、例えば「こもれびの丘」では狭山丘陵からカタクリの種を持ってきて、着生を目指して4年が経過しています。開花までには7年かかるといいますが、このような活動もしております。植物については、園芸という切り口と自然再生を見せるという両面から、利用者に近づけるということが可能なのだと思います。
しかし、昆虫などの動物については、鈴木先生がおっしゃられたように標本という手段もありますが、基本的には動物園のように利用者と生物が一気に遠い位置関係になるのではないでしょうか。自然の状態で見せたいのですが、その状況下で利用者が野生動物に近づけるような仕組みづくりはなかなか難しいと思っています。昆虫採集などはそういった意味においては中間的な位置づけにあると思います。それ以外はバーチャルなど何かうまい手立てをいろいろと考えていかなくてはならないと感じています。
また、花の情報はうまくいけば広域的な話題になりえるのですが、動物の情報というものはかなり地域的なものとなりますね。
私共のところでは職員の自己評価を実施していますが、おもしろいと思ったのは、「自然」という項目に低い得点を与えていることでした。昭和記念公園は他の国営公園に比べたら自然が落ちるということです。職員の多くは自然の多い国営公園の転勤を重ねているということもありますが、自然に対してハングリーな気持ちをもっていることについては、自然復元への原動力になる非常にいいことですし、取り組んでいけることだと思います。

鈴木:昭和記念公園については、立地からして周辺が都市化されていますし、他の国営公園は周りにも緑があるところなので、致し方ないのかと思います。
一般に公園の情報イメージといえば花や緑が多いと思います。そういえば、私が昆虫採集をしていた小学生のときに武蔵野市で捕れた昆虫は、現在、昭和記念公園にほとんどいることがわかっています。先日、標本調査をしたときには700数種もの昆虫が採取できたのです。これだけ多くの昆虫が都市の中でまだ生息しているということ、それをリストアップしたということはすごいことだと思います。

井上:自然再生の場合ではその再生にかけるスパンが極めて長いわけです。10年、20年経過して初めて姿が見えてくる取り組みの事業なんじゃないかと思います。目に見えにくい自然再生のような事業を継続的に続けていくためには、利用者を含めまわりにどのように伝えていくかという努力も重要なのではないでしょうか。
しかし、一般に役所の場合には担当者が異動・転勤を繰り返すために、長期間に亘って持続されている事業を「伝える」ということにあまり熱心ではないのかなという気がします。昭和記念公園はそういった中においても比較的よく伝えている方だとは思います。伝えるために必要な素材はすでに集まってきているので、今後はそれをどのように伝えるか、どのようにテーマ化するかということになるのだと思います。

大橋:素材については確かにあるかとは思います。ただ植物も昆虫も、両方をわかる職員はなかなかいないのが現状です。

鈴木:調査する対象によってその調べ方はそれぞれ異なりますしね。例えば、「ベイトトラップ」という昆虫採集の罠は、餌を入れた紙コップを地中に埋めておいて、落下したものを見つけて調べる方法ですが、光に集まっているのを調べる方法もありますし、また鳥類は「ラインセンサス」という一つのラインに沿って歩いて何がいたかを調べる手法もあります。そういった意味においては、調査対象も見つける気にならないと見つからないものです。
それこそ私は、小学生の時にアリの行列を一日中観察していたこともありますが、かえって動物はこちらが長い時間をかけてじっと待っていないと見られないものですよね。一方、植物は花が咲いたら写真を撮影できるというふうに動くものではない。そういった違いは大きいですね。

椎名:個別具体的で、きめ細かいという面においては、植物はマスメディアに載りやすいということがありますね。それに対して動物は、こちらが体制を整えていかないと利用者と近づけるような取り組みはできないものだと思います。

鈴木:その内容についても、全員が必ず知る必要はないわけで、そういう豊かな昆虫や鳥類の層は植物に支えられて成り立っている、またその逆もありますが。公園の自然のバックボーンが豊かであるということ自体は必要です。

井上:動物は、やはりリアルタイムで見せるということが不可能なので、結果として情報の形式でもって、提供するしかないのでしょう。その情報提供には特に映像が非常に有効だと思います。
今年はたまたまタヌキの映像が出来上がっているので、花みどり文化センターで「ここにはタヌキがいます」という情報を来園者に知らせることができ、それは動物の情報提供としては最良の形式なのではないかと思います。ですから、トンボにしても「あそこで見られますよ」という情報を来園者の方々に提供すれば、本人が実際に行ってみて確認できるチャンスもあり、そのような情報の整理が必要だと思います。

鈴木:それは良い方法ですね。そういった情報提供の手段についても、動物と植物は異なるかもしれません。また、取り扱う分野についても人によっては好き嫌いがあると思います。植物は好きだけど、昆虫は苦手とか。その反対もあるでしょう。

井上:利用者もそれぞれですからね。でも、子供たちは昆虫など動くものを見ることが楽しいと感じると思います。

鈴木:年齢によっても違うことがあると思います。私の娘は、保育園の時はハナアブなど手づかみで捕まえていたのに、小学生になったらこんなに小さな虫がいても逃げ回っているのです。5歳くらいまでといった時期的なものだと思います。

井上:最近では昆虫が嫌いな人って、本当に多いですね。身近に昆虫がいない環境だからなのでしょうか。都市では、昆虫がいない環境が良好な環境としてとらえられている傾向がありますが、そのような誤解は、屋外の生活を通して解消していかなければいけないと思います。

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